伝票の基礎を知ることが経理上達の近道
会社のお金の流れをきちんと記録し、管理するために欠かせないのが「会計業務」。そのなかでも、取引を1件ずつ記録していく「伝票会計」は、実務でも非常に重要な仕組みです。
特に、「単一仕訳伝票」と「複合仕訳伝票」という2つの形式は、経理を始めたばかりの人が最初に覚えるべき基本のひとつ。
しかし、取引の内容によってどちらを使えばよいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、伝票会計の基本から、それぞれの伝票の特徴、使い分けのポイント、具体的な記入例までをやさしく解説します。
初心者の方はもちろん、経理の基礎を復習したい方にも役立つ内容です。
伝票会計ってなに?仕訳帳との違いも押さえておこう
伝票会計とは、取引を記録する際に「伝票」と呼ばれる記録票を用いて仕訳を行い、そこから帳簿(仕訳帳・元帳など)を作成していく方法です。
もともとは紙の伝票を手書きで記入する方式でしたが、近年では会計ソフトなどを活用して電子的に処理するスタイルが主流になりつつあります。
伝票会計の特徴
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すべての取引をまず伝票に記載する
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伝票をまとめて、仕訳帳や総勘定元帳を作成
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業務が分担しやすく、ミスや不正の防止にもつながる
一方、仕訳帳に直接記入する方法もあり、企業によっては伝票を使わない会計処理を採用しているケースもあります。
伝票会計は、特に社内で業務を分担したい場合や、チェック体制を整えたい企業に向いています。
単一仕訳伝票とは?|一対一の取引に使うシンプルな伝票
単一仕訳伝票とは、ひとつの取引について「借方」「貸方」にそれぞれ1つずつの勘定科目が登場する、最も基本的な仕訳形式です。
たとえばこんな取引
文具を現金で800円購入した場合
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借方:消耗品費 800円
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貸方:現金 800円
このように、取引に登場する勘定科目が合計2つだけで完結する場合は、単一仕訳伝票を使用します。
単一仕訳伝票のメリット
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シンプルで入力ミスが起きにくい
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会計初心者でもすぐに使いこなせる
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小口現金の使用など、少額で単純な取引にぴったり
複合仕訳伝票とは?|複数の勘定科目が絡む取引に対応
複合仕訳伝票は、借方または貸方、あるいは両方に2つ以上の勘定科目が登場する取引を記録するための伝票です。
たとえばこんなケース
通信費4,000円と光熱費6,000円を合算で銀行振込する場合
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借方:通信費 4,000円
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借方:水道光熱費 6,000円
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貸方:普通預金 10,000円
このように、複数の費用や収益が同時に発生する取引には、複合仕訳伝票が適しています。
複合仕訳伝票の特徴
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複数の取引をまとめて1枚の伝票で処理できる
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月末の支払い処理などに最適
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便利な反面、記入ミスや勘定科目の混乱が起きやすいので注意が必要
比較で理解!単一仕訳と複合仕訳の違い
比較項目 | 単一仕訳伝票 | 複合仕訳伝票 |
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勘定科目の数 | 借方・貸方 各1つ | 借方・貸方いずれかに2つ以上 |
よく使われる場面 | 現金払い、日常の簡単な取引 | 経費精算やまとめての支払い |
記入の難しさ | 初心者でも簡単 | 慣れていないとミスの可能性あり |
ミスの起こりやすさ | 比較的少ない | 記入間違いや勘定科目の選択ミスに注意 |
会計処理の柔軟性 | 限られる | 複雑な取引にも対応可能 |
取引の内容が複雑になればなるほど、複合仕訳伝票を活用する機会が増えます。
特に大企業や部署ごとの経費精算が多い組織では、複合仕訳の出番が多くなる傾向にあります。
実例で学ぶ|伝票の書き方を見てみよう
単一仕訳伝票の記入例
日付 | 摘要 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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5/1 | 文房具購入 | 消耗品費 | 800 | 現金 | 800 |
「摘要」には取引の内容を具体的に記載しておくことで、後の確認作業がスムーズになります。
複合仕訳伝票の記入例
日付 | 摘要 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
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5/10 | 通信費・光熱費の支払い | 通信費 | 4,000 | 普通預金 | 10,000 |
水道光熱費 | 6,000 |
このように、複数の科目をひとつの伝票で記録できるのが、複合仕訳の強みです。
どちらを使う?伝票の選び方と判断基準
どちらの伝票を使うかに明確なルールがあるわけではありませんが、以下のような基準を参考にすると迷いにくくなります。
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取引が単純で金額も少ない → 単一仕訳伝票
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複数の費用項目を同時に処理する → 複合仕訳伝票
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月末・期末などのまとめ払い → 複合仕訳が便利
なお、会社によっては伝票の書式や運用方法が社内ルールで定められていることもあるため、マニュアルや上司の指示を確認しておきましょう。
記入ミスを防ぐには?実務で役立つポイント
伝票記入では、次のようなミスがよく発生します。
よくあるミス
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勘定科目の選び間違い(例:通信費と雑費の混同)
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金額の誤記(0の数を間違えるなど)
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日付や摘要の記入忘れ
ミスを防ぐために
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記入後にダブルチェックの体制を設ける
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書き方の見本やテンプレートを手元に置く
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Excelや会計ソフトを活用し、転記ミスを減らす
こうした細かな確認の積み重ねが、ミスのない帳簿作成につながります。
まとめ|伝票を正しく使いこなせば経理の仕事がもっとスムーズに
単一仕訳伝票と複合仕訳伝票、それぞれの仕組みと違いを理解しておくことは、経理の基礎力を養ううえで非常に重要です。
最初は迷っても、取引を実際に伝票に落とし込む練習を重ねることで、判断力と正確さが自然と身についていきます。
経理の仕事は、会社の経営を支える大切な業務。
その第一歩として、伝票の知識をしっかりと身につけて、ミスのないスムーズな記帳を目指していきましょう。