変わるコートチェンジ──試合運営の新たなスタンダードへ
2025年を境に、バレーボールの国際大会における試合ルールに大きな変革が加えられます。
そのなかでも特に注目されているのが、セット間で行われる「コートチェンジ(サイド交代)」の方式の変更です。
これまで長年続いてきた“1セットごとの入れ替え”が見直され、新たな運用が導入されることとなりました。
従来、各セット終了ごとにチームがコートを交代するスタイルが採られてきました。
しかし、今後は原則として「2セットごと」にサイドチェンジが行われる形へと変更されます。
これは、選手の負担を軽減し、試合のテンポをより滑らかにするための取り組みの一つとされています。
実際、女子バレーボールの国際大会「ネーションズリーグ」では、この新ルールが先行して試験的に導入されており、2025年からの本格施行を前に既に観客の間で話題を集めています。
試合を観ていたファンの中には、「あれ、2セット目が終わったのにサイドを変えないの?」と不思議に思った方も多かったかもしれません。
この運用こそが、新しいコートチェンジのスタイルだったのです。
さらに、接戦の末に第5セットまでもつれ込んだ場合、8点先取のタイミングでのみサイド交代が行われるという明確なルールも加わります。
これにより、戦術的なバランスがより公平に保たれ、両チームにとって納得のいくプレー環境が整えられるようになります。
こうした変更は、実際に試合を戦う選手たちにとって非常に意味のあるものです。
たとえば、ストレートで3-0と試合が早々に終わってしまった場合、従来のルールでは一方のチームが常に「不利なベンチ側」で終始過ごすこともありました。
トレーナーとの連携やウォームアップ環境においても微妙な差が生じていたのです。
新ルールの導入によって、最低でも一度は本来のベンチ側でプレーができるようになり、精神的・身体的なコンディションをより整えやすくなると考えられます。
特に国際大会のような長丁場の戦いでは、このような細やかな配慮が大きな差を生むこともあります。
また、観戦面でもメリットは大きいです。
これまでのように、セット終了ごとにベンチスタッフが慌ただしく荷物を移動させたり、選手たちが大移動する様子が繰り返されることは少なくなります。
観客の集中力も削がれることなく、よりテンポよく、スムーズな試合進行が可能になるでしょう。
このように、「2セットごとのコートチェンジ」という新たなルールは、ただの運営上の変更ではなく、プレー環境の改善や観戦体験の向上にもつながる意義深い進化といえます。
今後のバレーボールは、選手にとっても、ファンにとっても、より快適で魅力的な競技へと進化していくことが期待されます。
プレーがもっと自由に!2025年に導入される新ルールで試合が変わる
コートチェンジの方式が変わる一方で、プレー中の技術ルールにも大きな見直しが入ります。
2025年から採用される新しい規定は、選手の自由度を高めるとともに、観客にとっても試合をより快適に楽しめるよう工夫されたものばかりです。
今回は、そのなかでも特に注目されている「ダブルコンタクトの緩和」と「チャレンジ制度の改善」についてご紹介します。
◆ トスの微妙なミスも許容へ──ダブルコンタクトに柔軟な判断が加わる
バレーボールを観戦していて、「今の、なぜ笛が鳴ったの?」と感じたことはありませんか?
特にセッターがトスを上げる際、指先にボールが2度触れたように見えるとすぐに「ダブルコンタクト」の反則が取られ、ラリーが途中で止まってしまうことがありました。
しかし2025年からは、この判定に大きな変化が加えられます。
自チーム内でボールを処理している状況であれば、多少のダブルコンタクトは反則とみなされない。
例えば、レシーブが乱れてセッターが無理な体勢でトスを上げたとしても、そのプレーによってボールが相手コートに返らず自チーム内に留まる場合、これまでなら反則だったケースが、今後はプレー続行となるのです。
この緩和は、プレーの流れを重視する近年の国際ルール改定の一環であり、すでにネーションズリーグでは試験的に導入されています。
その結果、従来よりもスムーズでダイナミックなラリーが多くなり、選手にとっては思い切ったプレーがしやすくなり、観客は中断の少ない試合展開を楽しめるようになってきました。
もちろん、明確に2回の接触があり、それが相手側への返球につながった場合は、これまで通り反則となりますが、選手の意図やプレーの自然な流れを尊重するという意味で、大きな前進といえるでしょう。
◆ 試合のテンポを守る──「ミッドラリーチャレンジ」の撤廃
もう一つの大きな変更は、試合中のビデオ判定に関するルールです。
従来はラリーの最中でも、ブロックタッチやライン判定に対してビデオ検証を求める「ミッドラリーチャレンジ」が認められていました。
ですが、この制度には課題もありました。
プレーの途中で試合が中断されることで、選手の集中が切れたり、観客が試合に没入しにくくなったりするケースもあったのです。
こうした状況を改善するため、2025年からはラリー中のチャレンジが完全に廃止されることになりました。
今後は、ラリーが終了した後にのみチャレンジを申請することが可能となり、サーブからラリー終了までの一連のプレーがすべて対象になります。
これにより、プレーの流れは保たれたまま、必要な場面では正確な判定が得られるという、バランスの取れたルール運用が実現されるのです。
この改定により、試合全体のテンポが向上し、観る側にとってもストレスなく楽しめるようになるでしょう。
ルールの透明性と試合の躍動感を両立させる、非常に意義のある変更といえます。
戦術に大きな影響!2025年から変わるサーブ関連のルールとは
2025年に予定されているバレーボールのルール改定では、サーブに関するルールにも大きな変更が加わります。
この変更は単なる規則の見直しにとどまらず、チーム戦術そのものに影響を与える革新的な内容です。
試合のスピード感が増し、戦略の幅が広がることで、より見ごたえのあるゲームが展開されていくことでしょう。
◆ サーブ時の位置取りが自由に!「ポジショナルフォルト」廃止の衝撃
最初にご紹介するのは、これまでの常識を覆すようなルール変更、「ポジショナルフォルト」の撤廃です。
従来、サーブを打つ瞬間には、サーブ側の選手たちはローテーションで定められた位置をきちんと守っていなければなりませんでした。
ポジションにずれがあると、それだけで反則となってしまうことも。ところが、2025年からはこのルールが大きく変わります。
サーブの前から、サーブ側の選手たちは自由に動いて好きな位置に立ってよいことになります。
これによって、選手たちは自分たちの攻撃パターンや戦術に応じて、より柔軟にポジションを選べるようになり、サーブからレシーブ、そして攻撃へとスムーズにつなげることが可能になります。
ただし、相手チームであるレシーブ側は引き続き、これまで通りローテーション順の位置関係を守る必要があります。
このように、サーブ側の自由度が増す一方で、受け手には従来通りの厳格さが求められるという構図になります。
この改定によって、サーブ直後から意表を突くようなフォーメーションや、フェイントを交えた戦術的なプレーが出やすくなることが期待されています。
ファンや解説者の間でも、この変更が試合にどんな変化をもたらすか、すでに大きな注目を集めています。
◆ 視界をふさぐ行為に即ペナルティ!スクリーン行為の厳格化
続いて取り上げるのは、「スクリーン行為」に対する取り締まりの強化です。
スクリーンとは、サーブを打つ選手の仲間がその前方に立ち、意図的に相手チームの視線を遮ってしまう行為を指します。
これまでも一応は禁止されていましたが、実際には曖昧な場面も多く、明確に反則を取られることはあまりありませんでした。
しかし2025年からは、主審が「これは意図的だ」と判断した瞬間に、即座にサービス失点として相手に得点が与えられるという厳しいルールが導入されます。
たとえば、サーバーの正面に立って腕を高く掲げるような行為や、ブロックのような構えをとって相手の視野を意図的にさえぎるような姿勢は、即スクリーンとみなされてペナルティの対象となります。
このルールの背景には、サーブレシーブの公平性を守るという明確な狙いがあります。
サーバーの動きを相手がきちんと視認できる状態でプレーを始めることは、フェアな競技運営に欠かせません。
判定が厳しくなることで、サーブ時の戦術はより洗練され、純粋な技術と戦略で勝負するクリーンなプレーが求められるようになるでしょう。
バレーボール界がさらに進化へ──大会制度・世界ランキング・記念日の新設とは?
これまでのルール改正が主にプレーや試合運営に関するものであったのに対し、2025年からは国際大会の仕組みそのものに大きな変化が訪れます。
こうした制度改定は、選手や監督だけでなく、観戦するファンにとっても大きな意味を持つものです。今回は、バレーボール界の構造的な変革について詳しくご紹介します。
◆ ネーションズリーグの構成が刷新!すべてのチームに昇格・降格の可能性が
これまでのバレーボール・ネーションズリーグ(VNL)では、「常連チーム」として毎年出場が保証されている国と、成績によって入れ替わる「挑戦チーム」が分かれていました。
しかし、2025年からはこの区分が撤廃され、すべてのチームが同じ土俵で戦うことになります。
新たな制度では、予選ラウンドの最下位に終わったチームは、翌シーズンのVNLから降格。
その代わりに、FIVB(国際バレーボール連盟)の世界ランキングで最も順位が高い非参加国が昇格する仕組みに変わります。
この改革により、VNLは一戦一戦が出場権を懸けた真剣勝負となり、全試合が緊張感に満ちた内容になることが予想されます。
観る側にとっても、どの試合にも大きな意味が生まれるため、見逃せないシーズンとなるでしょう。
◆ 地域大会にも光が!ランキング制度の拡大で世界がひとつに
もうひとつの大きな変化は、世界ランキングに反映される大会の範囲が広がることです。
これまでは、VNLや世界選手権といった大規模な国際大会での成績がランキングに反映されていましたが、2025年からはアジア選手権や南米選手権、東南アジア大会など、地域ごとの大会も評価対象に加えられます。
この変更は、特に中堅国や発展途上のバレーボール強化国にとって追い風となります。
国内外の舞台で積み重ねた実績が、国際的なランキングにも確実に反映されるようになることで、より多くの国がランキング上位を目指せる可能性が広がります。
競争がよりオープンになり、バレーボール全体のレベルアップにもつながるこの制度は、まさに「全世界が主役になれる」チャンスの広がりといえるでしょう。
◆ 7月7日は「世界バレーボールの日」──競技の誕生日を祝う新たな記念日
2025年の変化はルールや大会形式だけではありません。バレーボールという競技そのものの記念日も、正式に設けられることになりました。
1895年7月7日、アメリカ・マサチューセッツ州でバレーボールの原型が初めて紹介されたこの日を記念し、FIVBは「World Volleyball Day(世界バレーボールの日)」として、7月7日を正式な国際記念日に制定しました。
今後、この日には世界各地で記念試合やイベントが開催され、バレーボールの魅力を広く発信する特別な1日となることでしょう。
ファンにとっても、競技の歩みと魅力を改めて感じる良い機会になりそうです。
まとめ:未来に向けて、よりスピーディーでフェアなバレーボールへ
今回の改革は、単なるルールの変更にとどまりません。試合のスピード感を高め、戦略性を広げ、より公平な舞台を整えることで、バレーボールの魅力をさらに引き出すための布石となっています。
また、女子代表チームにおける女性コーチの登用促進や、ジュニアカテゴリー(アンダー世代)の大会運営見直しなど、競技全体を底上げする取り組みも進行中です。
世界のバレーボールは、今まさに新たなステージへと進化を遂げようとしています。
この変化をしっかりと見届けながら、私たちファンもより深く、そしてより楽しくバレーボールと向き合っていきたいですね。